厚生労働省の食中毒統計資料[1]によれば、2022年は全国で962件の食中毒事故が発生し、その患者数は6,856人。内5名の方はお亡くなりになっています。
原因食品は、やはり魚介類が圧倒的で962件の内、384件が魚介類を原因とした食中毒です。
その他は、肉類・卵類、穀類及びその加工品、野菜(豆やきのこ類含む)複合調理食品などとなっています。

ここでは「自分が経営する飲食店で食中毒が起きた場合に、どのように対処するのが適切なのか」について説明します。
まず、食中毒が発生した際には、まず慌てず冷静に対応すること。これがもっとも重要です。
食品衛生管理者として、次のような対策を講じてください。

[1] 厚生労働省の食中毒統計資料(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html

食中毒が発生したらまず最初にすべきこと

顧客への対応

食中毒(またはその可能性)をどのように知るのか。
それは、多くの場合、「顧客からの連絡」というケースが一般的です。
お店で食事をした顧客から「食中毒かもしれない」との連絡が入った場合には、慌てずに以下の事実について確認してください。

  • 来店日時、場所(席など)
  • 何を食べたのか
  • 症状はいつ頃からなのか
  • どのような症状があるのか
  • 一緒に食事をした人で同じ症状が出ている人は他にいるか
  • 顧客の氏名と連絡先

顧客からの連絡が入った段階では、お店で提供した料理が食中毒の原因であるかはわかりません。しかし、疑いがある以上、その可能性を感情的に否定せずに、冷静に対処しましょう。

情報収集

顧客の健康問題が食中毒によるものか否かは、病院の検査結果が出るまで判断できません。通常、食中毒かどうかが判明するまでには約2~3日かかります。その期間中、飲食店では以下の点を確認しておくことが重要です。

  • 他の顧客から体調不良の報告があるかどうか
  • 仕入れ業者に「他の店で食中毒が発生した」という情報が届いていないか
  • スタッフの中に健康問題を訴える者がいないか

また、食中毒の疑いがある日に提供された食材が残っている場合、保健所から検査のために提出を求められることがあります。そのため、当日の食材は捨てず、各食材に適した方法で保管しておくことをおすすめします。

行政への対応と保険会社への連絡

病院での検査の結果、顧客の体調不良・食中毒の原因があなたのお店で食べた食事だと判明した場合には、以下のような対応が必要になります。

行政への対応

顧客の体調不良が食中毒によるものであると判明した場合、顧客や病院から保健所へ通報が行われます。
また、お店にも「食中毒の疑いがある」という連絡があった際には、保健所に連絡しましょう。
保健所は、食中毒の原因調査のため、該当する店舗へ立ち入り検査を実施します。
検査時に以下の質問があるため、事前に準備しておくことが重要です。

  • 食中毒患者が来店した日時と場所
  • 他の利用者からの苦情の有無
  • 当日の来店者数
  • 食中毒が疑われるメニューと調理過程
  • 体調不良の従業員の有無

さらに、以下の資料提出も求められることがあります。

  • 調理手順マニュアル
  • 衛生管理マニュアル
  • 仕入れ業者リスト
  • 従業員の検便検査結果

保健所の立ち入り検査で、飲食店提供の食事が食中毒の原因であることが確認された場合、検査から数日~1カ月程度で行政指導や行政処分が行われることがあります。

保険会社への連絡

飲食店経営において、食中毒のリスクは避けられません。
そのため、食中毒発生時の対策を事前に準備しておくことが重要です。
保険会社には、飲食店での食中毒発生に伴う損害や費用を補償する保険商品(店舗保険などと呼ばれます)が提供されていることがあります。
各保険会社で名称は異なりますが、「生産物賠償責任保険」、「賠償責任保険」、「PL保険」などと呼ばれています。
このような保険に加入していれば、損害の補填を受けることが可能です。
従って、顧客から食中毒の疑いがあるとの連絡があった場合は、保険会社への連絡を忘れずに行いましょう。

店舗保険について
事業を営むお店には、さまざまなリスクが取り巻いています。お店にとって必要な基本補償や業務リスクの補償(食中毒による賠償など)などがまるっと1つにまとめられた保険もありますので、是非ご自身で探されてみて下さい。また、その際、検索エンジンにおいて、保険関係のキーワードによる検索はPRサイトがたくさん表示されるため、直接保険会社に相談することをおすすめします。

原因究明と対策の立案

食品衛生管理において、食中毒はどのような事情があろうと、「起きたことは仕方がない」などと決して軽視すべき問題ではありませんが、時計の針を巻き戻すことができないのもまた事実です。
保健所と連携して、検査を行うなどして、食中毒の原因となった食材や調理過程を特定し、徹底的に原因を究明しましょう。
同時に、従業員の衛生管理や調理器具の清潔さもチェックしてください。
原因が特定されたら、再発防止策を立案しましょう。
具体的には、従業員の衛生教育の徹底や、調理方法の見直し、食材の取り扱いや保存方法の改善などが考えられます。

対策や改善策について、お力になれるかもしれませんので、是非当サイトまで気軽にご相談(無料)下さい。

情報発信と信頼回復

食中毒発生後の対応は、お客様への情報発信と信頼回復に努めることが重要です。
目的を「信頼回復のための情報発信」とした場合、「食品衛生管理」「法律」この2つの専門的な視点からアドバイスさせていただきます。

食品衛生管理の視点から

食中毒事案が発生した後、信頼回復のためには、以下の点に注意して情報発信を行ってください。

  1. 事実の説明と謝罪
    まずは、食中毒事案の原因となった具体的な事実を説明し、お客様や関係者に対して謝罪の言葉を述べましょう。これにより、店舗の透明性と誠実さが伝わります。
  2. 原因究明と改善策
    事案の原因を徹底的に調査し、その結果を公表することが重要です。また、再発防止のための具体的な改善策を立て、それを公開しましょう。改善策については保健所からのアドバイスや指導だけではなく、食品衛生管理のプロにも一度相談してみましょう。これにより、お客様が安心して来店できる環境を整えることができます。
  3. 衛生管理の徹底
    店舗の衛生管理を徹底し、その様子をSNSやホームページなどで発信しましょう。こうした取り組みにより、お客様に安全性が伝わり、信頼回復につながります。
  4. 定期的な報告
    改善策の進捗状況や衛生管理の状況を定期的に報告することで、信頼回復の努力を示すことができます。また、お客様からの質問や意見に対しても丁寧に対応し、コミュニケーションを大切にしましょう。

法律的視点から

食中毒事案後の信頼回復のために、法的な観点から以下の点に注意して情報発信を行ってください。

  1. 契約上の義務
    顧客との契約上の義務を遵守し、万が一の補償や対応を適切に行うことが大切です。また、これらの対応を公表することで、お客様に対する誠意を示すことができます。
  2. 法令遵守
    食品衛生法や消費者契約法などの法令を遵守し、適切な対応を行いましょう。また、その取り組みを明確に伝えることで、法令遵守への意識が高いことをアピールできます。
  3. 第三者機関の評価や認証
    信頼性を高めるために、衛生管理やサービス品質に関する第三者機関の評価や認証を受けましょう。これらの情報を積極的に発信することで、お客様に安心感を提供できます。
  4. 店舗のリニューアルやイベント
    食中毒事案を機に、店舗のリニューアルや新メニューの開発、特別なイベントの開催など、お客様に新たな魅力を提供することで、信頼回復につなげましょう。
  5. 地域との連携
    地域の消費者団体や商店街、行政と連携し、共同で食品衛生に関する取り組みを行うことで、地域全体の信頼回復にも貢献できます。また、これらの取り組みを発信することで、お客様に安心感を与えることができます。

以上のように、食品衛生管理と法律的な視点を参考に、信頼回復に向けた情報発信を行ってください。
事実の説明や謝罪、原因究明と改善策、衛生管理の徹底、定期的な報告、契約上の義務や法令遵守、第三者機関の評価や認証、店舗のリニューアルやイベント、地域との連携など、多角的なアプローチで信頼回復に努めましょう。
そして、コミュニケーションを大切にし、お客様からの質問や意見に対しても丁寧に対応することが信頼回復の近道となるでしょう。